<虹の壁>に囲まれた世界エル・ステル。人々は宙に浮く”浮遊島”で、慎ましくも力強く生きていた。
父親譲りの刀技を扱う<武芸者>のクロエ―クロエ・天道。
怪力任せの荒々しいガンナー<獣>のミリィ―ミリディア・ジュリス・コルトゥナム。
三年前、村のオラクルと親父殿の遺言から始まった<機械仕掛けのオーロラ>を倒すための旅は、遺跡島群クプのトッコ遺跡にて<獣司祭タタンカ><島守ルルイエ>そして<機械仕掛けのオーロラ>の来襲により途絶する。トッコは崩壊し、敗北を知るのみで終わる旅、放心の帰路の果て、二人は故郷が捨てられていた事を知る。
打ちひしがれるクロエ。ミリィに殺してくれと懇願するその時。
親父殿の墓の前、赤い夕陽の空の下、再び見える<機械仕掛けのオーロラ>。
それは遙か宙に浮かぶ、螺子と発条と金管の群れ。
人知の至らぬ構造体から、殺戮に足る質量を持つ錆が剥がれ落ち降り注ぐ。
絶望と死の瀑塵の中、クロエは生の理由を見出す。
「ぶち込みたい。」
「何をだ。」
「ぶち込めば、滅ぼせる、そんな何かを、ヤツに……だ」
「ヤツに滅びをぶち込むまでは―生きて生きて生き抜いてやる!」
生けども生けども生きめやも―終焉は生の先にある。
求めるのは死ではなく決着、倒れるならば、ヤツの骸の上で、だ。
生き延びた二人。クロエは飛行船の上で決意する―
俺は生きる。生きてヤツを倒す。
ヤツを倒すために、足りない強さ。
生と日々を積み重ね、その強さを手にするまで、少年と少女の荒野行は終わらない。